「親を尊ぶことの苦悩と祝福」
(出エジプト20:12)

カテゴリー 礼拝メッセージ要約(説教者による)

 十戒の後半、人との関係について語る最初の戒めは、「あなたの父と母を敬え」です。「敬う」とは、「重んじる」ということです。私たちは幼い頃からこの教えを学校などで聞かされていますが、必ずしも実行できているわけではありません。最も近い親との関係において、私たちは最も深く傷ついている、ということがあります。そのためこの戒めは、親を敬うことができない私たちの罪を裁く言葉となることがあります。
 しかし、そもそもこの戒めは私たちを裁くためではなく、私たちを祝福の中に生かすことを願って語られたものです。父と母を敬うことが、あなたにとっての祝福となる、というのです。親を重んじることができないとき、私たちはその子どもである自らをも重んじることができず、「こんな自分など価値がない」と思ってしまうものです。この戒めは、親を重んじ、自らをも重んじて生きる祝福へと私たちを招いています。
 具体的な回復のために、自分が親との関係において傷を負っていたことをまず認めることが大切です。「こんなことを思ってはダメだ、親不孝だ」と否定するのでなく、心にある思いをそのまま受け止めます。
 そのとき、自ら軽んじてしまいそうになる私たちのために、御子キリストが十字架で命をかけてくださったほどに、神は私たちを重んじてくださったという福音の恵みが輝くのです。そして、主にあって自らを重んじるようになるとき、その福音の恵みは私たちの周りに生きる家族にも及びます。キリストの恵みが、私たちの親をも重んじて生きる者へと私たちを変えていくのです。福音の恵みによる奇跡の始まりです。
(仙台南光沢教会牧師 佐藤信人)