「生涯の日を数える知恵」
(詩篇90篇)

カテゴリー 礼拝メッセージ要約(説教者による)

 この詩は、人の命の儚さを語ります。しかも、「人の子よ、帰れ」という神の呼びかけによって人は死ななければならないと言います。その人生は、ひと夜の夢のように、夕方には枯れる草のようだと、詩人は語ります。日本人は、儚さの中に美しさを見いだしますが、聖書は死をさらに厳しく見つめ、人はなぜ死ななければならないのか、ということを語ります。すなわち、罪のゆえに神の裁きを受けて、人は死すべき存在となったことを遠慮なく告げます。
 そこで、詩人に一つの祈りが生まれました。「われらにおのが日を数えることを教えて、知恵の心を得させてください」。余命期間を知ろうというのではなく、人生に終わりがあることを弁えて生きるように、ということです。神によって造られた被造物である私たちは、神によってその人生が閉じられる存在であることを自覚し、今をどのように生きるべきかを悟るようにというのです。
 そのとき、詩人にもう一つの祈りが生まれました。「主よ、み心を変えてください。いつまでお怒りになるのですか。あなたのしもべをあわれんでください」。「み心を変えてください」とは、他の訳では「帰ってきてください」と訳されるように、「悔い改める」をも意味する言葉です。神のほうが向きを変え、私たちのところに帰ってきてくださるしか、救いの道がない、というのです。
 この詩人の切なる祈りは、御子キリストの到来によって成就しました。神は向きを変えるようにして、私たちのところへ来てくださり、私たちの罪の裁きを御子に向けられました。このキリストの十字架の恵みにより、私たちは神の招きに応え、今ここで、安心して神のもとに帰ることができるのです。
(仙台南光沢教会牧師 佐藤信人)