「善をもって悪に報いる道」
(ローマ12:9-21)

カテゴリー 礼拝メッセージ要約(説教者による)

 パウロはキリスト者の具体的な生き方について語る中で、「悪をもって悪に報いず」と勧め、「自分で復讐してはならない」と命じます。迫害に苦しむローマ教会の人々の中に、迫害する者を呪う心、復讐したい心が生じていたのでしょう。
 自分で復讐する代わりに、「神の怒りに任せなさい」と言います。人の悪に対して報いを与えるのは神の領域のことだからです。神だけに許されている悪への報復を人間がしようとするとき、それは自ら神に成り代わる態度です。私がこの世の支配者だと言うようなものです。そうしたくなるのは、神の支配を信じ切れていないからではないでしょうか。神の支配を信じるからこそ、復讐は神の任せることができます。
 私たちがなすべきことは、「神よ、私に代わってあの人を厳しく罰してください」と復讐を願い求めることではありません。パウロは、「すべての人に対して善を図りなさい」と勧めます。悪に対して悪をもって報いるのではなく、善をもって返すというのです。それによって、相手を悔い改めへと招くのです。
 このような高い倫理に、私たちは尻込みしそうになります。だからこそパウロは、「愛する者たちよ」と呼びかけます。これは、「神に愛されている者たちよ」ということです。私たちもかつては神の敵であり、悪に対して悪をもって報いられても仕方のない者たちでした。ところが神は、私たちに罰を下すのではなく、御子キリストを十字架につけ、罪人への深い愛を示されました。他者によって存在を否定されていた者たちが、神によって全面肯定されたのです。この神の恵みのゆえに、私たちは善をもって悪に報いる道を歩むように押し出されているのです。
(仙台南光沢教会牧師 佐藤信人)