「人を盗む罪」
(出エジプト20:15)

カテゴリー 礼拝メッセージ要約(説教者による)

 「あなたは盗んではならない」というこの第八戒は、人の持ち物を奪うという一般的な盗みの罪を指すと理解して間違いではありませんが、もともとの意味は、人を盗むということでした。人を盗んで自由を奪い、奴隷として売買することを禁じたものです。聖書の時代、そのようなことが行われていたからです。
 現代に生きる私たちの国では、このような戒めは当てはまらないと思ってしまうかもしれません。しかし、精神的に相手を奴隷とし、支配し、自分の都合のいいように動かそうとすることは私たちの周りでも行われているのではないでしょうか。神は、そのような生き方から自由になることを求めておられます。
 この戒めが直接語られているのは、エジプトで奴隷としての苦しみを味わっていたイスラエルの民です。彼らの先祖たちは、兄弟が兄弟を盗んで奴隷として売り渡すという大きな罪を犯しました。その子孫が後に、自ら奴隷の苦しみを味わうことになったのです。神はその奴隷状態から解放してくださり、彼らを神のものとしてくださいました。その大きな恵みを受けた者たちだからこそ、もはや他者を奴隷とするような生き方はするな!と命じられます。
 私たちは罪の奴隷から解放され、新しい主人である神のものとされました。その私たちは、神だけを主人として仕えて生きるとともに、他の人の主人となって隷属させることもしないのです。神のもとからその人を盗むことになるからです。
 贖われた者たちの集まりである教会は、お互いに尊び、他者を支配するのではなく、自ら進んで仕えて生きる、新しい歩みを始めるのです。
(仙台南光沢教会牧師 佐藤信人)